#導入事例

世界的な鉄道車両メーカーも採用する自社特化型AI翻訳

今回は、シストランをご導入いただいているシュタッドラー・レール社と共催したウェビナーの内容をもとに、同社における本ツールの活用方法や導入効果などを紹介します。

シュタッドラー・レール社は、スイスに本社を置く鉄道車両の世界的なトップメーカーです。1942年の設立以来、鉄道市場のあらゆるセグメントをカバーする製品やシステムのサービスを提供し続けています。拠点は23ヵ国、従業員数は13,000人以上。世界5大陸43ヵ国にわたるグローバルな展開で成長する同社において、翻訳プロセスの効率化が重要な課題でした。

翻訳に求める要素は高度な品質と厳格な情報セキュリティ、そして顧客や従業員を支える多種多様な言語へのサポート。課題を解決に導いた、シストランのAI翻訳ソリューションとは。

01大量の資料をセキュアな環境でスピード翻訳

鉄道車両のように基準が高く、かつ厳格な市場でグローバルに戦う企業にとって、膨大な翻訳量への迅速な対応、高度な情報セキュリティは必須です。

海外の入札案件に応札可能か否かの判断は、「大量の仕様書や資料を、いかに短時間で正確に翻訳できるか」という問題に直結します。日常では、数千ページにも及ぶ膨大な図面・資料を顧客の言葉の数だけ翻訳する業務も発生します。性質上、翻訳のほぼ全てが機密情報として厳密に守られていなければなりません。

自社の情報セキュリティ基準が厳しい中でも、シストランのAI翻訳はクローズドな環境で運用可能な高い安全性と信頼性を備えたソリューションであるため、安心して導入することができました。

02エンジンカスタマイズで自社独特な専門用語にも対応

グローバル企業には、顧客や従業員の国の数だけ言語があります。加えて、専門市場における翻訳は業界特有の専門用語、社内用語、製品名など、特殊な理解が必須です。これまでは多言語の用語データベースを構築し、それを人手で参照しながら翻訳作業を行うことが一般的な解決方法でした。

シュタッドラー社は、自社内で蓄積した膨大な翻訳データをAIに学習させることで専門家の知識をそのままAI翻訳に継承。さらに、APIを通じて用語データベースと連携し、常に最新情報を適用することで、AI翻訳の結果は大幅な効率化を実現しました。

このエンジンのカスタマイズ性こそが、シストランと他社を差別化する最大の特徴です。

03継続的な品質改善を実現するカスタマイズワークフロー

多くの企業がAI翻訳のメイン活用に踏み切れない最大の理由に、専門分野の用語や文脈まで正確翻訳できない問題があります。シストランは、長年培ってきた豊富な言語知識を活かし、高精度なAI学習プラットフォームを提供しています。このプラットフォームにより、社内の担当者でも簡単にAIをトレーニングでき、専門家と同等の高品質な翻訳を実現しています。

そのワークフローとして、次のような手順が構築されています。

1. 学習させる言語ペアを設定
2. 言語により5万文~50万文の対訳データを用意
3. データをAIに読み込ませて学習
4. 学習結果を文とシステム両方のレベルで評価
5. 学習と評価を繰り返し、最終的に全ての専門用語をエンジンに統合

もちろん、ユーザーやポストエディターからのフィードバックに基づいた品質評価も、継続的に実施しています。自社の用語集を統合したあとの成果検証と修正を循環的に繰り返し、一貫した品質改善を図るという、よく構造化されたワークフローです。

管理も容易です。専門用語を集めたデータベースを「翻訳システムが分かるように」と再定義することで、既存用語の変更やアップデート、日々増え続ける新しい専門用語も迅速かつ最新の状態に保持できます。特に鉄道分野のような、正確性が必須とされる技術文書においては、ここに大きな意味があります。

04AI翻訳の半内製化によるコスト削減などのDX効果

シストランのAI学習プラットフォーム導入後、AI翻訳で年間約1億文字を翻訳しました。現在は理解の目的や簡単な翻訳案件であれば、完全にAI翻訳を利用しています。結果として、90%の費用と時間の削減が実現しました。

また、お客様への納品や認証取得を目的とするような、高度な正確さが求められる案件では、後編集が必要です。その作業のコストも、自社に特化した翻訳エンジンのおかげで50%ほど削減できています。

自社データ学習で精度大幅向上
自社データ学習で精度大幅向上

こうしたコスト削減も含め、シュタッドラー・レール社の翻訳戦略は、順調に進んでいると考えられます。今後もできるだけ多くの言語データを収集し、学習を継続させていく意向です。まだ一元管理されていない、世界各国にある拠点のデータにも注目し、最終的には必要な言語を全てカバーするのを目標としています。

学習でさらに品質が高まれば、社内におけるAI翻訳をもっと広く受け入れるでしょう。自社開発した社内システムに翻訳APIで統合し、業務プロセスの改善を成功した実績もいくつかあります。このような柔軟にカスタマイズ可能な特徴は、翻訳の品質や社内の利用率拡大に大きく左右しますので、これからAI翻訳を導入する方はぜひ考慮しておいてください。